センター長挨拶

センター長
髙田 淳

 2020年の日本の人口は1億2571万人。65歳以上は全人口の28.8%,75歳以上は14.9%を占めています。1950年の65歳以上人口は5%未満でしたので,70年間で約6倍になりました。県別では高知は65歳以上が35.6%,75歳以上は19.1%で秋田についで全国2位の超高齢県です。超高齢社会で生きる皆さんは、長生きするのであれば健康に生きたいと思われるのではないでしょうか。これがテレビやネットでも取り上げられる健康寿命です。2016年の女性の平均寿命は約87歳,健康寿命は約75歳,男性はそれぞれ約81歳,約72歳です。平均寿命から健康寿命を引いた年数,女性では平均12年間,男性では9年間が何か体調に問題を抱えて生活する期間になります。

長く健康に生きる。これをサポートする一助になるのが健康診断です。
以下の図は2020年の日本の死亡原因とその割合を示したものです(人口動態統計のデータより図を作成)

人口が高齢化すると,高齢の方に圧倒的に多い,ガンなどの悪性腫瘍は当然増えてきます。今でも死亡原因の1位を占めているのがガンなどの悪性腫瘍ですし,発病した方の数だけを見ると今でも年々増えています。医療が進歩すればガン治療で回復する患者さんは増えます。ただ、だからと言ってガンを発病する人の数が減るわけではありませんので,ガン検診はとても大切です。男性と女性では違う種類のガンもありますが,日本人の4人にひとりがガンで亡くなり,2人にひとりは一生のうち一度はガンと診断されます。2020年に調べられたガンの種類別の死亡者数では,男性は肺,胃,大腸,すい臓,肝臓の順に多く。女性では大腸,肺,すい臓,乳房,胃の順になっています。

昔,日本人で最も多かったのは胃ガンです。今でも数が大きく減っているわけではありませんので,ガン検診の重要性は変わっていませんが,ピロリ菌感染との関係が明らかになり除菌という治療によって,今後とも減っていくことが予想されます。検診で萎縮性胃炎と診断されたら,詳しい検査を受けて積極的に除菌治療を受けることが大切です。

肺ガンはどうでしょう。これだけ禁煙の重要性が叫ばれてきました。かつては80%を超えて世界のトップクラスだった日本人の喫煙率も,今は30%台まで減っています。それでも肺ガンは男女共に多い結果となっているのはなぜでしょうか? 元々ガンは高齢者に多い病気です。長寿社会になって,高齢者の割合がどんどん増えるのでガンも増えてきています。この事を考慮して,若い年代が多かった昔と比較してみると(年齢調整と言う方法です),肺ガンのピークは1990年代後半で,その後は徐々に減ってきていると報告されています。日本人の喫煙率のピークは1960年代でしたからそれから30年経って,ようやく肺ガンが減りだしたことになります。タバコの害は長年かかって起きてくるもので,増える病気は肺ガンだけではありません。長年の喫煙の結果,高齢になってから肺や心臓の病気になって思うように動けなくなります。また,間接喫煙はご家族の健康にも大きく影響します。

禁煙はとても重要です。

 ガンの次に多い心臓病や脳血管疾患など,主に血管の動脈硬化にかかわる病気も重要です。ガン検診とは違って健康診断では動脈硬化で細くなった血管の場所まで見つけることはできません。そこで重要になってくるのが,動脈硬化の原因となる生活習慣病です。高血圧,脂質異常症(コレステロールや中性脂肪の異常),糖尿病(血糖値が高い),慢性腎臓病(クレアチニンが高い,尿に異常がある)などの早期発見と治療が大切です。ただし,健診時の1回の検査結果だけでは,病気の確定診断ができない場合も多く,たいていは経過を見ていく必要があります。それには年一回だけの健診では不十分ですので,血圧であれば家庭で測ってもらい,高ければ内科を受診していただく。悪玉コレステロールや血糖値,腎臓の機能については,かかりつけの先生を決めて,経過を見てもらうことをお勧めしています。健康診断で『貴方は高血圧,あるいは糖尿病なので治療が必要です』などとはっきり言われた場合は,治療開始のタイミングがすでに遅くなってしまっている恐れもありますので,早急に医療機関を受診する必要があります。

 当センターは年間10000人以上、一日に40-50人の皆さんに受診していただいているため,時間が限られ,受診時には細かな点まではご説明ができない場合もあります。これまでの検査結果などを踏まえて保健指導をお勧めする場合もありますし,参考資料などもお渡ししていますので,ぜひご利用ください。

皆さんが健康診断,ガン検診を有効に利用され,今後も健康な日々を長く過ごされることをスタッフ一同、お祈りしています。